タイトルそのままなのですが、アメリカ駐在から日本へ帰任したら年収(税引き前)が1000万円以上減りました。
正確には、2018年後半の日本での給与とボーナスから算出した2019年の年収が、アメリカ時代の年収と比較して1000万円以上も減ることが確定した、です。
日本とアメリカでは物価や教育費が段違いなので単純な年収差の比較にあまり意味はありませんが、そうは言っても事実として数字として、トップラインで1000万円以上ダウンというのはとても興味深い結果になりました。
ここでは数字の詳細ではなく、年収が下がってもいまの会社で働き続けようと考えた理由を書き残しておきます。年収よりやりがいをとったぜ!という単純なストーリーなら書くことも無いのですが、駐在後期から数年間、ながらく時間をかけて考えたので。
本記事は、2018年12月にアップした以下2つの記事から続く「海外駐在と年収」シリーズの完結編にあたります。
この記事を書いた理由は未来の自分のため
本ブログの想定読者はほぼ一貫して「過去の自分」です。
海外駐在を目指し英語の勉強をしていた20代の頃の自分であったり、渡米後間もない右も左もわからない自分であったり。
彼(とその家族)に役立ちそうな情報やアドバイスを投げかける。
英語や、お金や、教育や、大事だけれど人からは教えてもらえないことを中心に。
そんなニッチな情報がどこかの誰かにも役立つことを願っています。
ただし今回の記事の想定読者は例外的に「未来の」自分です。
2018年に何を考えて、どう行動して、どんな結論を出したのか。
キャリア選択について思考した経緯を書き残すことで、未来に振り返ったときにその判断が良かったのか、悪かったのかを見極めるためです。
「意図した行動」であれば、仮に失敗したとしても何が悪かったのか検証することができ、学ぶことは多いです。
一方で「無意識・無思考の行動」は何が悪かったのか、何が原因だったのかを振り返ることが難しいため改善がしにくいです。
これは自身の学生時代の運動の経験であったり個人投資家としての経験に基づいていますが、本質的にはなんにでも応用が利く方法。
「負けに不思議の負けなし」という格言にも近いものです。
したがって、いまの会社でいまの仕事を続けるという決断はあくまで、「いま」だけのものです。
ここで宣言したから変えないというのでは本末転倒。
いつでも自分の行動を、意思決定を振り返り、環境変化に応じて舵を切るための一つの道しるべとして筆を執りました。
ある30代会社員の、ほんの一例に過ぎませんが、仕事や転職に悩む方へ何かの参考になれば幸いです。
いまの会社に残る理由
非常に多くの要素がありますが、後の自分のために言語化し、絞ったものを書き出します。
自身の市場価値を高められそうなポジションにいること
日系メーカーとしてのいまの会社全体を客観的にみると、ほぼ成熟期。堅調ではあるものの今後10年間で爆発的な成長というのは難しいかもしれません。
ただし、自分が担当する分野・部署でみると話は別。ここ数年でベンチャーが大量に参入していることから、まだ伸びしろがある市場だと判断できます。競争・アライアンス含めて「動いている」ホットな市場と言えます。
成長市場に身をおくことで得られるメリットは、停滞している成熟産業のそれよりも大きいという原則に照らすと、意外と悪くない仕事。会社として見るのと事業として見るのでは異なります。
この部門は社内の位置づけとしては傍流です。売上規模の大きい花形部署と比べるとちっぽけなもの。
ただ、成熟市場に入ってしまった花形部門と比べると、上述のようなベンチャーとの競争やユーザーニーズの変化への対応スピードにおいてより多くの経験を積むことができます。
3年間のアメリカ駐在で得た市場の認識や意思決定速度は確実に活きているほか、過去のアメリカ駐在員でこの分野を知る人の多くがすでに転職をしてしまったことも追い風となり、自分に回ってくる打席の数も多い状況。
これらをひっくるめて、自分のバリューを高められるポジションにいると判断しました。
唯一不満なのはマネージャになれなかったこと。
マーケティング/事業戦略という、技術系ではない自分の職種においてマネージャ経験の有無は大きな差になると考え、帰国前の上司との面談で強く訴えましたが、残念ながら平社員ポジションのままでした。
ここはまだまだ自分の力が足りないのだろうと真摯に受け止め、昇任のチャンスを狙います。
給与・社内での期待・育成の恩などは決定打の理由にならない
この半年、以下のような理由で現職への残留を考えていました。
・給料は悪くはない
・自分である程度残業のコントロールが可能 (上司にも恵まれた)
・社内で重宝されている
いずれも重要であり、すべてセットで手に入る環境というのは転職しても見つかるかどうかというくらい、現況は恵まれています。
ただどれも、決定打にはなり得ないという結論に至りました。
1点目の給与については、自分の価値観のチューニングといえるかもしれません。
アメリカ時代は自分の(見た目上の)給与が高いだけではなく、現地マネジメントでは日本円換算でウン千万円とか億プレイヤーがゴロゴロ。
またTwitter上の特に個人投資家や海外経験者と交流していると年収1000万円とかそれ以上の方がゴロゴロ。
こうした環境にいるとつい比較したり、勘違いしてしまうのですが、自分の給与は決して悪くはないです。
もちろん、もっと欲しいかといわれれば迷いなくYES! なのですが、妥結した、という感覚です。
3点目も心理的に占めるウェイトは大きかったです。
社内で重宝されているので仕事のやりがいのようなものは強く感じていましたが、それこそが勘違いだったのではと後述の「転職の思考法」を読んで考え直しました。
自分がいなくなっても会社は回るというのは当たり前。仕事を任せてもらえること、それ自体に喜びを感じるのでは不十分であり、その任せられた仕事で自身のバリューを高められるかどうかがキャリア選択の鍵。
極論、自身の成長につながらない仕事が量ばかり多くても(それで社内での評価は上がったとしても)、それは仕事選びの決定打になりえないのです。
考えてみれば当たり前の話なのですが、半年も悶々と考えてだんだん迷子になっていた自分がいました。
自問:
新卒で入った会社だから残るのか?新人から育ててもらった恩を感じているのか?今の答え:
どちらもNo. 新卒で営業を担当した製品は撤退してこの世にないし、プロジェクト半ばで出向させられたこともある。
育ててもらった上司や先輩のうち、仕事ができる人は中途入社組が多い。#転職の思考法— へらじか@海外マーケ (@moose_fukui) December 30, 2018
家族を含めたライフプランに合致した
2018年冬のボーナスのあと、夫婦で今後の資産推移を30年後までシミュレーションしました。
直前で給与は決定打ではない、と書きましたが、家族で生きていく上では絶対に必要。
悪くない(そして、決して良くもない)日系メーカーで継続して給与をもらえることはやはり強みです。
家賃補助の仕組みを最大限に活用すると、子供2人を大学にいれ、夫婦2人も生きていけそうな見通しが立ちます。
この時の試算は節約と資産運用の2019年方針を立てるために実施したので、いくつかパターンを分けています。
貯蓄試算完了。グラフは
①春時点のラフな試算
②同上+生活費5%節約&利回り1%で資産運用
③冬賞与実データ反映(節約も運用も無し)春のラフ試算と比べ実際の手取り年収は+40万円
30年後の総資産額は①<②<③の順つまり小さな節約や堅実な運用より、年収アップが最強という冷酷な現実。 pic.twitter.com/ZFgKNouhAs
— へらじか@海外マーケ (@moose_fukui) December 8, 2018
そして漠然とではありますが、子供には日本以外の国も知った上で将来の選択をしてほしいと考えており、いまの会社であれば2回目の駐在チャンスがあるのはメリットです。
英語や中国語が話せるという言語話者能力は翻訳の発達によってそのうち強みではなくなるかもしれませんが、異なる文化圏で多様な考え方を浴びる経験は2人にとって貴重なはず。
30歳前後の自分でもそうだったので、子供にはこれを早めに経験して欲しいなという願望があります。
その手段としては留学もありますが、上の子が留学する歳になるまであと10数年。
それまでには2回目の駐在があるのではないか。いや、それまでに、したい。
という意思込みの未来を思い描き、妻とも意見が合ったので、ライフプランと合致しているというのが現時点での考え。
海外人事のことはローテーションもあり、自力だけではなんともしがたい部分なので、2度目の駐在の芽がないと思ったら方向転換をします。
ちなみに、このときの試算シミュレーションで最終的に出した結論は資産うんぬんではなく「健康が一番大事」という、あさっての方向でありながらとても大事な気づきでした。
昨晩から我が家の資産状況を振り返っていると、転職や副業云々よりも健康が1番大事だなと思わされる。
つまるところ自分が捧げる労働力の対価で今後数十年に渡り家族を支える構図なので、事故や病気をしたら崩壊。ギャンブル性が高すぎる。
不労所得を積み上げる必要性をひしひしと感じる。 https://t.co/j1T1RsnCg2
— へらじか@海外マーケ (@moose_fukui) December 8, 2018
参考にした本:「転職の思考法」
「1冊の本との出会いが人生を変えた」という言い回しを、自分はまったく信じていません。
人の選択の背景にはその人が背負うものがたくさんあるはず。
家庭のこと、親のこと、仕事のこと、お金のこと、育ってきた環境、人間関係・・・
これらが複雑に絡み合い導き出される選択は、複雑だからこそドラマチックなのだと思います。
本から得る情報や人の意見はそこに加えられる数%の要素でしかないと思うので、「1冊の本との出会い」にたいした影響はないというのが自分の考え方。
しかしながら、今回のように現職にとどまるか、転職かという心の中のせめぎ合いの中において、本を通じて思考をすっきりと整理できた経験には自分自身が驚きました。
海外駐在からの帰任以来ずっと考えてモヤモヤとしていたところに
「そこそこ!それが欲しかったんだよー!」と思えるような1冊。
例えるなら、凝った肩にマッサージが効くように、凝った脳みそをピンポイントでほぐして動きを良くしてくれる様な本が、「転職の思考法」でした。
きっかけはTwitter上で、たまたま同じ年に日本へ帰国した駐在員の方々が推していたこと。
その方々は結果として転職されていましたが、その結果に至るまでの活動ツイートをリアルタイムで追いかけたことで、大きな影響を受けました。
その方々の転職が正解だったかどうかはわかりません。
自分の、留まるという選択肢もまた同様。
ですが、惰性ではなく自分の明確な意思をもった決断をする後押しになったという点で、この本には感謝しています。
読み進めるごとに自信がついたり不安になったり、
「この会社に残る選択は正解だ」
「いや本当に未来はあるのか」
と自分のキャリア選択の答え合わせをするかのように感覚が左右に揺さぶられ、30代に刺さること間違いなし。
今年の後半、タイムライン上で人気だったので購入。
アメリカ駐在からの帰任後、転職せず元の会社に残ることを決めたけど常にマーケットと自分を照らし合わせていたいから。読めたのはまだ30ページくらいだけど、これは面白い。転職しない人にもおすすめされる理由がわかる。#転職の思考法 pic.twitter.com/xzKgvJQy62
— へらじか@海外マーケ (@moose_fukui) December 30, 2018
余談ですが、この本による脳みそマッサージの経験が快感すぎて、2019年のお正月は本ばかり読んでいます。急に読書に目覚めました。
今後のキャリア選択の方針
上でも書いたとおり、いまの会社でいまの職種にいるという選択はあくまで2018-2019年のいまだけの選択。今後10年、20年続くかどうかはまったく分かりません。
企業に勤める以上、異動リスク、上司変更のリスクは常にあることを念頭に、リスクヘッジの意味での転職は常に頭のすみに置いておきます。
その上で現職での働き方を変えるとすると、外向きの仕事を増やすことが2019年の目標。
帰国以後は本社のHQとしての社内仕事の割合が多くなってしまいましたが、お客さんとの直接接点や他社の方とのコミュニケーションの割合をもっと増やすことで、広い意味での「お客さん」、言い換えると「ファン」を増やしていくのが今年の抱負。
サイロにはまらないように、常に自分の市場価値を客観視した動き方をしていきます。
だから、今の部署に居るうちは転職しない。
逆に言えば自分の力の及ばない異動リスクにさらされているのも事実。「花形部門への異動」という一見華やかなコースに入ったら黄色信号。
その日のために自分を鍛え、きたる日にピボットするための仕込を続ける。以上、 #転職の思考法 での学びと実践。
— へらじか@海外マーケ (@moose_fukui) December 30, 2018
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