資産運用の記事を書いていくにあたり、人生の転機となった海外駐在期間の給与や収支について書きます。
30代日系メーカー駐在員、子供2人連れで海外赴任したへらじかの月給6,000ドルは、果たして恵まれているのかどうなのか。貯金はできるのか。
これから渡米する方にとって、家計の計画を立てる際の参考になれば幸いです。
わざわざ自分の給与を世にさらす動機
「駐在すると家が建つ」
という言葉をご存知でしょうか。一昔前に有名だったフレーズです。
日本と海外で給与の二重取り、手当ても付与され、豪華な暮らしをしながら勝手にお金が貯まり・・・帰国すると家を買えるだけの貯金額になっているという意味です。
商社や金融系の一部では、国によってはこうしたケースもあるようですが、自分の周りでアメリカに赴任している日系メーカー駐在員に限って言うと
「駐在すると家が建つ、なんて昔の話」
でした。
自分は2018年夏に日本に帰国しましたが、渡米前に駐在と給与の感覚を持っていればもう少し賢く資産形成ができたのではないかと振り返ります。
いま、Webを探しても赤裸々にアメリカ駐在員の給与の話を書いているサイトはなかなかありません。
自分が赴任する2015年も、駐在員とお金にまつわる情報がなかなか得られず苦労しました。
海外生活ではお金に代えられない経験がたくさんできます。一言では表せないほど、異文化の生活は人生観を変えてくれます。
それでも、どんなに綺麗ごとを並べても、生きていくためには容赦なくお金がかかります。
特に近年子供が2人続けて産まれた我が家ではそろそろ真剣に考えないといけない時期。
そんな時、赴任前にWebで情報が取れないというのは心細いものがありました。
ここから、後世のマネープランのために一つの例を残したいと考えて筆を取りました。
駐在員の給与は額面以外に、医療費や教育費の補助など給与明細に表れない部分が多くあり企業ごとに対応も様々です。
本記事はある日系メーカーの一例として参考にしていただければ幸いです。
収入:30代アメリカ駐在員の月給は6,000ドル≒60万円
30代前半のマーケティング職、へらじかのアメリカ銀行口座には毎月約$6,000が給与として振り込まれていました。
以降シンプルに1ドル=100円換算としますが、約60万円になります。
一般的に言えば、とんでもない高給です。
30代、税引き後の手取りで60万円が毎月口座に入る人生になるとは思いませんでした。
そして、実際にはこの給与の裏にはカラクリがあるので、本当に「夢」だったのです。
収入に続いて、物価の高いアメリカでの支出をご紹介します。
支出:固定費のみで4,150ドル≒約41.5万円
家賃2,200ドル≒22万円
最も大きいのが家賃。
月給6,000ドルの中から家賃約2,200ドルを支払います。日本円換算で約22万円。
給料天引きの制度ではなく一度自分の口座に入金されるため、見た目上の給与は良いですが毎月ゴッソリもっていかれます。
22万円の家賃と言えば日本では高額な部類です。
CHINTAIのサイトによると世田谷区の3LDK家賃相場が20万円、品川区で22.3万円とのことで、超都心部に住むくらいの家賃。
それじゃあ、へらじかさんはさぞかし良いお宅にお住まいでしょう、と思われるかもしれませんが、当時住んでいたアメリカ北東部では普通の価格です。
上を見上げればきりが無く、下もまた同じく。
なにより下に下に行くと、必然的に治安の悪い地域に住むことになります。
アメリカの治安の悪い地域というのは日本のそれとは桁違いで、車上荒らしが日常茶飯事、年に数回銃撃戦があるというレベル。
実際に車で20分の距離にそうした地区もあり半額の家賃で住めますが、まさか子連れでそんなところを選べません。安全をお金で買うという感覚は赴任して初めて意識をしました。
水道光熱費400ドル≒4万円
続いて、水道光熱費として月々約400ドルがかかります。
季節変動はありますが夏は冷房のために電気代、冬は暖房でガス代がかかるので、平均このくらいです。
詳しく言うと水道代、下水代、ごみ処理費、リサイクルごみ費、コミュニティの共益費等々が含まれます。
ネットとTVで100ドル≒1万円
インターネットとTVは合わせると約100ドル。
TVにお金を払う感覚もアメリカならではです。
日本のような豊富な地上波放送はなく、どの家庭もいわゆるケーブルテレビを契約し、チャンネル数に応じた契約プランの支払いをします。
ちなみに我が家はケーブルTVの契約をやめてインターネットTVにしました。使っていたのはAmazon Fire TV。いまでは日本にもありますね。
Fire TV Stickの初期投資35ドルだけでランニングコストがかからずに済むのは破格です。
良し悪しはありますが、これで月々50ドル、年間600ドル(6万円)もの固定費の削減になっていたので文句なしです。
唯一、引越直後から賢く節約できた点かもしれません。
車のリース料とガソリン代で500ドル≒5万円
そして車。言わずもがな、アメリカでは必需品です。ガソリンスタンド併設の最寄のコンビニまで歩いて30分、最寄のスーパーでは80分ですから。。。
へらじかの車は会社が支給してくれていましたが、妻の分は自費購入。
実際には購入ではなくリースとして月々350ドルを払っていました。
住宅選びと同じく、走ればいいやと安い中古車や対衝突性能に乏しいコンパクトカーを買うことも、安全上できません。
自分はまだしも、もしも英語に堪能ではない妻が出先で故障したら、もしも巨大なトレーラーやピックアップトラックとぶつかったら、と考えると新車のSUVという選択肢にならざるを得ませんでした。
赴任直後、アメリカの給料が入らない時期に新車を購入するとなると日本の銀行口座からアメリカへ送金する必要があります。
日本の預金を極力減らしたくなかったのでリースを選択しました。
我が家は外国人の扱いなので、リース料率は一般のアメリカ人向けリースよりも高めに設定されています。
ガソリン代が約150ドルで、車関係の支出は500ドルとなります。
保育園代が950ドル≒9.5万円
次に養育費。
3歳の娘のデイケア(保育園)代が月々950ドルでした。
当初週3日で約$800でしたが、2人目の出産に伴い週5日へ変更。
年齢の小さい子ほど保育料も高く、一時期は週5で1,000超という時期も。
年間11,400ドル、114万円です。大学の学費のようですが、保育園です。
ここは異文化で初めて子供を預けるという不安を少しでも減らすため、数件回った中で質の良いところ、少々高めのデイケアを選んでいます。
安かろう悪かろうの「悪かろう」のレベルが前述のとおり、日本では考えられないレベルだとすると、ここもやはりお金で安心を買うという選択が働きます。
ちなみに他の及第点の施設でも2割安い程度といったところ。
アメリカの物価、特に人件費がかかるサービスにおける高さを感じ取っていただけるかと思います。
残った1,850ドル≒18.5万円から食費・日用品・被服費等を出す
さて、いったん整理します。
月収6,000ドルから支出計4,150ドルを差し引くと、1,850ドルが残ります。
ここから食費・日用品・被服費・レジャー費などの雑費を出すことになります。
貯蓄についてはこの1,850ドルのあまり分のほか、ボーナスだけは日本円で日本の銀行口座に振り込まれていました。
お肉やビールは日本に比べて安いです。が、その他ほとんどのものは3-5割増しで高い印象。
子供服は安いです。セールの割引率が大きいので。
そして駐在員のリアルな話ですが、日本の本社から出張者が来た際のお付き合いの支出なんかもここから出します。
晩御飯に行けば軽く40-50ドル。
ちょっといいステーキハウスなんかに行けば100ドル。
この調子で1週間も滞在されると、正直たまったもんではありません。
代わる代わる毎週誰かが出張に来ていると、支出は増えるわ家族と夕飯は食べられないわで踏んだりけったりです。
駐在に伴う妻のキャリア中断も家計としてはマイナス
ふたたび収入に着目すると、赴任前は妻も働いてダブルインカムだったのがシングルになっています。
単純に経済面だけ見ると、とても痛いです。
キャリア再構築がうまくいくかどうかもわからないことを考えると、将来にわたって世帯収入に悪影響を与えることは間違いありません。
それでも仕事を辞め、キャリアを中断してまで言葉の通じない国についてきてくれたこと、現地での出産を決意して4人暮らしを実現させている妻には感謝しかありません。
この気持ちがあるからこそ、いま彼女のキャリア再構築を全力で支援しています。
本日、妻のキャリア作り支援のため終日ワンオペ育児。
自分が転職して年収200万円増やすより、妻が100万円稼いでくれた方がお金+彼女の人生の充実の合算で得だと思っているので、サポートは全面的に。へらじかは駐在から帰任した奥様のキャリア構築を応援します。
— へらじか@海外マーケ (@moose_fukui) December 1, 2018
また、自分の勤務体系はExempt Employeeに該当したので、残業しても休日出勤しても残業代は付かず、収入は増えません。
上記を考慮すると、家族連れでのアメリカ駐在においては物価の高さゆえ、日系メーカーの給与水準で家族連れでは、決して裕福な経済状況にはならないと言えます。
もちろん生活に困窮するというレベルではないのですが、「駐在すると家が建つ」というほど大幅に潤うというものでもありませんでした。
それでもアメリカで暮らし・働いて良かった
単純にお金の面だけ言えば、アメリカ駐在は得とは言えなかった、というのが3年間を振り返った率直な感想です。
ただそれでも、3年間住んで、働けてよかったと断言できます。
公私両方における視野の広がり、アメリカのハイレベルなビジネスパーソンとの業務経験、トラブル対応やサバイバルを経て鍛えた英語。
どれをとっても、100%自力で渡米して得ることはできませんでした。
単身ならまだしも、子供が生まれた直後のタイミングで多大なコストを払ってアメリカに、という選択はできなかっただろうと思います。
妻もはじめの1-2年は「アメリカなんて来たくなかった、帰りたい」と毎日言っていましたが、いまは反対に「アメリカに帰りたい」とのこと。
この心境の変化には長いストーリーがあるので、別の機会に。
それに、かりそめであっても高収入・高支出の暮らしぶりを実体験できたからこそ、お金に対する考え方が広がり、アメリカで資産運用を本格的に始めることができました。
失うものもありましたが、普通に日本で暮らしていては得られなかったものを活かして、今後の日本での生活を充実したものにしていきます。
この記事が、これからアメリカ生活を始める方の目に留まり、何かの参考になることを願って。
この記事ではアメリカ側での月収と生活費にフォーカスしました。日本の銀行口座に入るボーナスを含めた年収についてはこちらの記事をご覧ください。
コメント
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アメリカはカリフォルニア州に駐在されているユキヒョウさんのブログに、本記事へのリンクを掲載いただきました。
ユキヒョウさん、ありがとうございます!
今ブラジルに日系メーカーで駐在しています。30台前半です。興味深く読ませていただいております。企業により駐在員も大きく待遇が違いますね。アメリカに異動する可能性もあり、10年前に留学していた時よりも物価があがっており驚きました。
MJさん、コメントありがとうございます。ブラジルから読んでいただけるなんて嬉しいです。
物価は州や地域によってかなり差があるので、一概にアメリカのくくりでは語れないかもしれません。自分は比較的田舎、北東部でこんな環境でした。もしMJさんがアメリカに移動される際に、この情報が何かしらの形でお役に立つことを願っています。