兼業大家が不動産投資方針を決めた道筋と事例 2020年版

30代からの資産運用

約2年間の検討を経て2020年5月に実現した不動産投資について、ステップを10個に分けて綴っています。

今回はその中でも特に重要な「不動産投資の方針決定」について。
以下の図中で言う4番目に当たる部分です。

へらじか不動産 1棟目取得までの10ステップ


一口に不動産投資・賃貸経営といってもやり方は十人十色。
それだけに初心者にとって大事なのは目標設定と、自分に適した方針の確定だと考えます。

正解が何かというのはまだわかっていませんが、日系メーカーに勤務する傍ら兼業大家として第一歩を踏み出した自分の事例を軸に、どんな方針を立てて臨んだのか、どのような道筋で考えてきたのか、実例を交えて振り返ります。


大きく3つの流れで方針を固めていきました。

  • 自己資金の把握
  • 希望するキャッシュフロー額の設定
  • 長期の展望を想像

以下で一つずつ解説します。

自己資金の把握

これから不動産投資を始めようという場合、自己資金をどれだけ投入可能かを把握することが物件選びや方針づくりにおいて役立ちます。

役立つ、というのは選択肢の絞り込みという意味です。

例えば自己資金500万円で都内のマンション1棟を買うのは相当難しく、非現実的。無数にある選択肢の中から効率的に方針を立てるためにも、ある程度消去法で決めるのも手です。

なお、自分が購入した約4,000万円のアパートでは約650万円の初期投資をしました。

はじめにライフプランを描く

どれだけの自己資金を投入できるかを考えるにあたって拠り所にしたのはライフプラン。

これは夏・冬のボーナスのたびに預貯金額や今後必要になる生活費・教育費などを一覧化して見直しているものです。

あくまでシミュレーションではありますが、以下の条件で今後30年間の見通しを計算しています。

  • へらじかの一馬力、賃金上昇率毎年1.5%
  • 現職であるメーカーで勤続
  • 家は福利厚生扱いの賃貸に10年(残り8年)、その後自分で賃貸
  • 子供2人は小中高が公立、大学は私立文系
  • 毎年、総資産額の1%の運用利回りを想定


その上で向こう30年間の預貯金額の推移を計算。
ラフでも予測であっても、こうして書き出してみることで将来の予測が立てられます。

2020年1月に作成した単年度収支と総資産額の予測


まずこうして先を見据えて、自分にとって不動産投資が本当に必要なのかどうか考えました。

上記シミュレーションの通りに人生が運べば十分に生きていけそうですが、仮に子供が留学を希望したり、大学院へ進みたいといったときには少々不安が。

もしそうなった場合に、できれば気前よく資金を出してあげたい。

そのためには現在行っている株式の運用だけでは足りないな、という課題が数字で見えてくるのがライフプランを作るメリットです。
(後に家族の理解を得る時にも、数字は役に立ちます)

対策として取りうる手段も無数にあります。

もっと給料の良いところへ転職するのも、現職で2度目の海外駐在チャンスを手に入れるのも、副業をするのも、どれも選択肢

それらを並べて比較する時に短期だけではなく長期で考える土台になるので、お金関係の意思決定は最近全てこのライフプランを基にしています。

直近でシミュレーションした結果は2020年初めに記事にしています。

投資可能な金額を算出

上記ライフプランを基に、不動産への投資金額はできれば500万円、多くても800万円と決めました。

最終的にかかったのはその中間、650万円くらいなので合格ラインと言えるかと思います。

ここで、物件価格と初期費用の簡単な計算をしてみます。

物件価格に対して金融機関からの融資が90%出るとすると、自己負担は10%に。

ここに手数料や諸経費として平均7%くらいが乗ってくるので、投資可能な金額と取得可能な物件価格のレンジはこんな感じになります。

あくまで目安ですが、ここではざっくりと把握するのが大切。

  • 物件価格 × 17% = 諸経費を含めた初期投資
  • 3,000万円 × 17% = 510万円
  • 4,000万円 × 17% = 680万円
  • 5,000万円 × 17% = 850万円


この時点で、価格帯の高いRCマンションという線は自分の頭から消えました。
選択肢を絞り、調査・学習をする分野を限定する第一歩です。

適切なタイミングを見定める

ライフプランを基にして考えるのは、金額だけではなく、その投資時期。

不動産価格が高い・安い、または融資が出やすい・出にくい、と言った外部環境の前に自身のライフステージの観点からリスクを取るべき時期なのかどうかを考えました。

自分の場合は以下が判断材料。

  • 向こう8年間は勤め先の住宅補助(約7割)が出ており住居費が安い
  • 自宅購入予定はまだ無し
  • 子供は5歳と3歳で教育費が安い(受験予定も無し)
  • 車は購入済み


これらを考慮するとしばらく大きなお金を動かすイベントは起こりそうにありません。それなら銀行に寝かせておくよりはお金に働いてもらおうという考え。

逆に2026年くらいになってくると、中学校受験どうする?とか、家賃補助が切れた後の家をどうする?というのが家庭の話題に上がり、不動産どころじゃなくなる可能性がなんとなく予想できます。

子供が小さいうちが貯めどき、という言葉の重みを実感します。

希望するキャッシュフローを決める

初期投資額やそのタイミングがある程度見えてきた段階で、どのくらいのキャッシュフローを得たいかを考えました。

シンプルに言うと手取りでどれくらいのお金を不動産から得たいのか、という話です。

これが後の物件選びに効いてきます。

ライフプランを描く(再)

くどいようですが、ここでも上述のライフプランが役立ちます。

自分の場合は子供2人の進学や、あるかもしれない留学に必要な金額をざっくりと計算。
それに対して不足する分をいかに補うか。
転職か、副業か、不動産かといろんなパターンを考えました。

言うまでもなくお金はあればあるだけ良いのです。(自分も5億円くらい欲しいです)

ところがある程度の目標レンジを設定しないことには、不動産においてはいろいろ困ることがあります。

不動産仲介業者さんに物件の希望を伝えるにも、金融機関に対して融資のお願いをするにも、共通言語になるのは数字です。

数字のイメージを持たずにこの関係者の協力を得るのは困難ですし、思わぬハイリスクな選択をしてしまうことにも繋がり得ます。

この辺が不動産「投資」というよりは「経営」だなと感じる所以なのですが、物件購入に至るまでの後工程、つまり関係者と金額のイメージを合わせながら進めていくことを考えて現実的な利回りを考えるステップです。

「月5万円」を目指してみる

今回の物件購入に際して「最低ライン」として決めたのが月5万円の手取り額でした。

家賃収入から返済・経費・税金など諸々を引いた後で5万円が手元に残ること。年間で60万円です。

これを不動産屋さんに伝えた時のリアクションは「堅実な目標ですね」でした。

ただ顔には「そんなに少なくていいんですか?」と書いてあったようにも見えました。

扱う金額が大きな不動産業界の人からすると、年間100万円にも満たない金額というのは少なく感じた様子。

この辺りは感じ方や背景次第ですが、仮に3,000万円で表面利回り12%の物件があるとすると月の家賃収入は30万円(満室時)。

空室率や経費を差し引いた手残りを20%と仮定すると、6万円です。

目標としていた月5万円に対し、少し余裕を持った月々のキャッシュフローを得られる計算になります。

1棟目ということもあり、大きな金額で失敗をするよりはこのくらいの規模感で実務を通じて経験値を得たいと思い、ひとつの基準にしました。

そして無理に高いリターンを狙ってなかなか購入できないまま時間が経つのも避けたかったので、高すぎない目標設定にした、というのも一つの背景。

結果として購入した物件は約4,000万円、月々の手残りは8万円前後、ということになったので当初の目標はクリアです。(年間90万円)

多少の空室があったとしても月5万円はこえそうなので安心です。

なお、この時点で区分マンションや戸建て投資は検討から外しました。

検討当初は融資を使わずに区分マンションや一戸建てを現金購入して賃貸することを考えていました。
ところがシミュレーションをしてみると区分マンションや戸建てでは自分の希望するエリアで月5万円の手取りを安定的に得ることが困難そうだということが見えてきたためです。

また、もともとやっていた株との比較も一因でした。


自己資金の観点でRCマンションという選択肢を消去したのと同様、月々の手残り希望額の観点から区分と戸建てを消去。

この2つの観点から自然と、自分の向かう先が1棟アパートなのだろうなというのが見えてきました。

最後に将来の長期展望を考えます。

長期の展望を考える

ここまで「自己資金」と「希望キャッシュフロー額」の2つの観点で見てきました。

最後に自分が考えたのが、中長期の展望。その展望の邪魔にならない1手目を打てるように将来像をイメージしました。

兼業大家か、専業大家か

1棟目は会社員との兼業で賃貸業をやりますが、将来的に自分はどうしたいのか。これは方針を固める上で重要な問いです。

ブログやTwitterで発信されている大家さんたちを見ると当初は兼業で、複数物件を取得した後に会社員をやめて専業の大家さんになる方がいます。

その道を辿りたいか、それとも兼業を続けるか。

もしも専業になることを意識するなら法人化は必須。同時にキャッシュフローだけにこだわらず資産評価まで考えた打ち手が必要になります。

その打ち手の邪魔になるような物件を最初に選んでしまうと、専業化の実現が遠のいてしまいます。

自分の場合は、専業化・アーリーリタイアは今のところ頭に無いため資産性はあまり重視せずシンプルにキャッシュフローのでる物件選びをしました。

今のところ勤め先で得られる経験、特に海外市場で外資系競合を相手に戦う・良い製品を作る・切磋琢磨することを面白いと感じています。

その熱があるうちは、不動産はあくまで兼業・副業として位置付けて2足の草鞋を狙っていくつもりです。

3手先まで考える

兼業でいくと決めながらも、不動産の規模拡大には興味はあります。

個人所有で2−3棟までで止めるか、法人を作って5棟くらいを目指すか、現在考え中です。

そのいずれの場合でも、購入と売却のシナリオは3手先くらいまで考えました。

ここでもライフプランを参照しながら

「2022年時点の自己資金がいくら、だからこのタイミングで2棟目を買って・・・」

「2026年で1棟目の減価償却や損失繰越が終わるから、2027年に売れたら売って・・・」

と、半分妄想に近いですが、3手先くらいまでの打ち手を複数、想像しています。


そのシナリオの邪魔にならないようにと考えて、金額がそこまで大きくなく、一都三県で、そこそこの規模の駅からほど近く、土地面積も一定程度あるアパートを購入することになりました。

これが正解かは誰にもわからない上、狙った時期に売却できるかどうか将来は読めませんが、おいおい答え合わせをしていきたいと思います。

最期はペーパーアセット

かなり気が早いですが、長期の展望の一環として考える終活。

ここで物件を相続したいなら資産性のある立地が良いですし、生前に手放すなら買い手が付きやすいものの方が好ましいです。
「その時」を想像したときに、邪魔にならないような選択をするのが肝要。


この記事の冒頭でも書いたように、不動産の収益は子供の教育費に使うのが自分にとっての主な目的です。

言い換えると、教育にはお金をかけてあげたいと思う一方で資産を残してあげる気はありません
魚の取り方は教えてあげるけど、魚はあげない、というやつです。

なので、教育費の充足という目的を果たした後もずっと不動産を保有し続ける気は、いまはあまり強くありません。

むしろ相続で半端な持分になったり売るに売れなくなってしまって子供たちを困らせるよりは、50歳を超えたくらいから徐々に手離れの良い証券に替えていきたいなと。

これらの理由から、30年も40年も保有する必要はないので築古を許容。
そして売りやすさも考えて、一定程度大きな駅から徒歩10分以内という立地のアパートを選択しました。

10年後くらいに全然違うことを言っている可能性もありますが、今の考えはこんなところです。

まとめ

  1. 自己資金
  2. 希望キャッシュフロー
  3. 長期の展望

という3つの観点を考えた結果、自然と取るべき方針、投資戦略や物件のタイプが固まりました。

これ無しに不動産屋さんとの面談をしても、目移りしてしまい、決断ができないというのが体験談です。

いま現在は自分がやったことを振り返りながら書いているのでスムーズな流れに見えるかもしれませんが、実際には別記事でまとめた書籍ブログ・Webサイトを参考にしながら、業者さんとの面談を繰り返す中で意思固めをしていったのが実情です。

こうした方針固めが一旦できれば、後のステップは比較的スムーズに流れていくと思います。

ベテランの方から見れば拙い内容ですが、これから不動産投資・賃貸経営を始めようとしている境遇の似た方の参考になれば幸いです。

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